長い、読みにくい、暗い。最低なお話です。
これちょーど乙一さんのZOO読み終わった後だったかも・・・だからか!(納得)
生まれた時代を間違った。この世界は醜く下品で、下卑ている。
でも、そんな世界の中にもうつくしいものはあるのだから、全く呆れた話だと思う。
日の光を忘れてしまった暗闇の中で、嘗てヒトだった生き物は活動を始める。彼らは此処が何処だか、今が何時か分からないし、分かろうともしない。彼らの虚ろな瞳はただ前だけを見つめる。当たり前だ。隣を見ても後ろを見ても同じ景色しかないのだから。時々、ふと思い出した様に雨が降る。雨とは、この世界に残った生き物を排除するものだ。然しヒトであったものはこれを天の恵みと称し、崇めた。だから雨の後には死体が沢山転がっている。誰も其れを見て悲しまないし、勿論しがみ付いて泣いたりなどしない。片付けもしない。死んだ人間は子の餌に成るのだ。母は自分の子を産み落とした瞬間子の事を忘れてしまう。だから子は必死に生き、雨上がりの死体を貪り食うのだ。闇の中蠢く影たちに目的など無く、ただ呼吸をして、この世界に残された酸素を吸っているだけ。誰も其れを間違っているとは思わないし、逆に正解だとも思っていない。彼らに思考が在るとは考えない方が良いと思う。後で失望したいのなら別だが。兎に角、この世界は汚い。昔はまあこの世界にも何処かには美しい場所が在るのだと言う根拠の無い幻想を抱いていたが、すぐさま逸れは砕かれた。世界は縮小しているらしい。雨に狂喜するヒトだったものを見下ろし、これが世界なのだと自らに言い聞かせた。現に見ろ、あの壁を。昔はあの壁は美しく白くなかっただろうか。記憶に残る空は太陽と月が交互に笑う美しい青と漆黒ではなかったか。そんな考えはこの世界では何の意味も為さず、泡と成って濁った黒い壁と空に消えていった。嘲笑が零れてしまいそうだ。一緒に、目から滴も。何故こんな世界に生まれてしまったのだろう、子は世界を選べるのではなかったか。いや、違う。きっとこんな腐り落ちてしまいそうな世界の中に、たったひとつ光っていたうつくしいものを見て心は此処を望んだのだ。汚い世界なのに、其れを見つければ全てが浄化される、そんな神々しいものを。振り返ると、雨に喜ばぬひとつのヒトがいた。ヒトなのだ。あの、外で踊り狂う、汚れた作り物ではなく。死ぬのが怖いとヒトは呟いた。嗚呼そうだった。これだったのだ、あの眩い光は。この光を見た瞬間、どんな幸せより権力より望んでしまったのだ。この世界にしかない、お前と、自分がヒトであるという証明が。
この世界に残されたうつくしいものが、お前とわたしだという証明を求めたかっただけだ。
わたしも酸素を吸っているだけの愚かな嘗てヒトだったものに、なりたくなかっただけだ。
然しもう刻限切れだった。お前を見つけるのが、もう少し早ければ、
わたしは、ヒトになれたのに。
雨は、静かにわたしとお前の体温を奪っていった。
くらいあめ
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