これはーくだらない。
盛り上がりもオチもなにもないぞ。感動も出来ません。
ただ武くんにあーゆーネガティブな発言をさせたかっただけです。
ニーズはどんな傾向を求めているのかな・・・
わたしには武くんという知り合いがいる。昔は柔道が得意だったらしいのだけれど、今はからきし駄目らしい。確かに、彼のたるんでぷよぷよとしているお腹を見るに、もう現場復帰は無理かな、とわたしは思ったりするわけで。
武くんはいつもどこか少しだけ苦しそうに笑う。演技でもなんでもなく、それは武くんの中から滲み出る何か良くないものが形を現してしまったものなんじゃないかなあ、と思う。
武くんは、人間は信じられないから。と言って、いつも犬を連れていた。真っ白な犬だ。名前はシロというらしい。別にありきたりでいいだろ、と武くんは少し怒った。
武くんは他人を嫌いになるということがまずない。むしろ自分を嫌悪している、といった表現の方が正しかった。武くんはいつも言っていた。
――おれには、人に話せるほどの話の種がない。相槌も打てない。だから話には加わらないよ。
武くんは確かに、話が上手な方ではなかったし、話題だって豊富ではなかった。でもわたしは武くんの話が嫌いではなかった。わたしがそう言うと、決まって武くんはあの切なそうな笑みで
――優しいね、里子さんは。
と言うのだ。わたしは別に優しくなんかない。優しいのは武くんだよ。
おれには里子さんという知り合いがいる。よく一人で机に座って、器用にペンをくるくる回しているのが印象的だった。里子さんは吹奏楽部で、同じアーティストが好きだったということで知り合った。
里子さんは大人だ、と思う。いつでもどこかクールにクラスを見ていて、言うならばガラスを一枚隔てた向こう側からおれたちを物語みたいに見つめている、そんな感じ。
――おれは、里子さんが羨ましかったよ。
――なぜ?
里子さんが首を傾げて聞いた。夕日の目の前を鳥の一軍がはばたいていく。
――おれには、人に話せるほどの話の種がない。相槌も打てない。だから話には加わらないよ。みんなは、おれがいない方がよっぽど楽しそうに話しているから。楽しみを奪う意味なんて、ないだろ。でも、おれはわがままだから、みんなの側にいたいと思ってしまうんだよ。迷惑、だろ。死んだ方が、いい、だろ。でもおれは死にたくない。はは、ひでえよな、こいつ。
里子さんは、大きな目を少しだけ細めて、おれの方を見ていた。元はと言えば好きなアーティスト。気が合うから一緒にいただけ。いつも教室の中にいるのに、ガラスを一枚隔てたような、そんな里子さんはおそらくもうおれのことは嫌いだろう。嫌なやつだと思うだろう。仕方がないか。けれど里子さんはちょっと笑って、
――わたし、武くんの話、嫌いじゃないけどな。
と言った。おれは嬉しくて、泣いてしまいそうで、どうにかこうにか、優しいね里子さんは、と、言うことしかできなかった。里子さんは嬉しいのか悲しいのか分からない顔で、武くん、とおれの名前を呼んだ。
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