ようするに、わたしは怖がりだと思います。
わたしは、自称、人類博愛主義者で、みんなスキスキだいすき! とか言ってるし、実際みんなが好きだったのですが、ある日、ある人を、あまり、好まないようになりました。自分でも驚くべきことだと思っています。
そのせいでしょうか、わたしは、まわりの目が怖くなって、わたしがあの人にいだいている感情と同じように、仲よく話していても、心のどこかでわたしはこのかわいらしい人たちにうとまれているのだろうなあ、と、思っていました。
そんなわたしを、たすけてくれたのが、こぐまさんです。
こぐまさんは、わたしより少し年上で、ほんの少しだけ背が高くて、頭がよくて、やさしいのです。いつでもこぐまさんは、何をやってももたつくわたしに、やさしくしてくれました。わたしは、みんなより頭がひとつ分わるくて、手先も器用じゃなくて、だめだめ、です。こぐまさんは、そんなわたしとは正反対で、しっかり者でした。
こぐまさんを、さいしょはわたしは怖がっていたのです。小さくてもやっぱり熊、ですから。けれど、いつでもやさしくて、しっかりしていて、わたしに笑いかけてくれる、こぐまさんが、いつしかわたしは大好きになっていました。
ただ、こぐまさん、最近わたしに冷たい気がするのです。わたしに話しかけてくれないし、すこし、おこっているみたい。こぐまさんの背のわりに広い肩を、うしろから見て、わたしは、意味もなくくちびるをかみしめて、また恐怖にふるえていました。
こぐまさんは、ほんとうは、わたしのことをうとましく思っていたのかもしれない。
そう思っただけで、息がつまりました。わたしはぐらぐら揺れる船の上で、おじさんたちのよくわからないにおい(みんなはカレーシューとか呼んでました)を、かがされながら、ぼろぼろ、涙をこぼしました。
わたしは、はたから見てもこぐまさんのことを大好きだったのがまるわかりだったみたいで、わたしのともだちは、みんな知っていました。最近こぐまさんがかまってくれないことも、それでわたしが悲しく思っていることもみんな、知っていました。
でも、こぐまさんが、いつもはすこし猫背ぎみの背中をぴんとのばして、がんばっているのを見ると、なんてこぐまさんはすてきで、かっこういいのだろうと、何度でも思います。
きょうも、こぐまさんは、すこし、きげんがわるそうでした。けれど、ふいに見える、こぐまさんのなんてやさしいことでしょう。わたしはうれしくて、すこし涙ぐんで、こぐまさんこぐまさん、とめげずに話しかけました。こぐまさんは、わたしの大好きだったこぐまさんそのものでした。
わたしは、これからもこぐまさんのちょっとしたことで一喜一憂するんだろうな、と思いました。わたし、怖がりですから。大好きな、こぐまさんに、嫌われたくありませんから。
春も近づいて、こぐまさんも、そろそろ、お別れの季節です。
ももが好きなこぐまさんに、もも味のあめをもって、わたしはこぐまさんに会いにいきました。
a little bear
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