登場人物の名前とか気にしちゃ駄目ですよ適当に思いついただけですからね
猫を拾ったんだ。気まぐれで、何仕出かすか分かんねー猫。
目が大きくて、首につけた鈴がちりんと言う。
猫の中じゃきっと、桁違いに大人しいんだと思う。まあ、時々突拍子無い事をするけど。
そしてきっと、猫の中じゃ唯一、恩返しをする猫なんだと思う。
このよでいちばんすてきなねこ
「お帰りなさい。また、怪我したんですか?」
「ん。まあちょっとな」
猫に上着を預けて、猫が作った夕飯を掻っ込んだ。栄養バランスの取れた美味い食事。
猫は鈴を鳴らしながら寝室から帰ってきた。ふるりと身を震わせて、耳を大きく立ててこちらを見る。鼠を取る前の様な。
「どうした?」
「いえ。もう1年ですか」
猫に言われて始めて気がつく。暦が示す日付けは、俺と猫が始めてであった日。
猫は取り壊された家の残骸の中で、雨に打たれて瀕死の状態だった。それを俺が拾ったわけだ。猫の毛は綺麗なブラック。長くて、ふわふわしていて、とても触り心地が良い。
「てめーを捨てた奴は許さねえ。・・・ったく、猫を置いていきやがって」
生き物はニンゲンの玩具じゃない。そんなの、子供でも知っている筈の事なのに。
眉間に皺を寄せながら暦と睨み合いを続けていると、猫が口を開いた。
「でもあたしは・・・真さんに会えて幸せですよ」
少し驚いて、猫を見る。猫は澄んだブルーグレイの瞳を恥ずかしげに逸らした。
「あたしは、あなたが拾ってくれたお蔭で、こうして生きていられるんです。だからあたしは毎日ご飯を作ってご公務に忙しい真さんをお待ちしているんですよ」
猫はそこまで言い切ると、きりりと顔を上げて俺の目を見た。
「お仕事お疲れ様です、真さん。今日は何人検挙を?」
「10人」
猫はきゅっと首を竦めて笑った。
「俺は今から風呂に入る。・・・お前も一緒に入るか?」
「もう入りましたよ。今12時ですよ?」
成る程、もう猫は寝る時間だった。俺は洗面所に向かう体を半回転させて、猫の方を見る。
「お休み、千鳥」
「はい、お休みなさい、真さん」
俺は笑って、また洗面所へと向かう足を進めだした。
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