いい加減止まないかなぁ、雨。
少し散歩に行ったら、急に雨が降ってきて、慌てて木の下に駆け込んだものの、この水の滴はいつまでも降り注いでいる。
大変、もう約束の時間かな。
あの人はとっても気が短いから、それでも責任感が強いから、あいつはどこだと怒りながらも1人でたくさんの紙の束と奮闘しているのだろう。
はあ、と溜息が零れた。
(あ、幸せさん、逃げないで!)
もういいかな、ずぶ濡れで帰るのもありかも。そう思って大雨の中足を踏み出したら、さっきまで下にいた木の葉が広がっていた。
いや、違う。これは・・・
「・・・遅ェぞ」
雨の日の木の葉色の傘の下で、困った様に、呆れた様に、あなたが言った。
「ごめんなさい」
笑って、傘に入る。
前言撤回。
あともう少しだけ、止まないで欲しいな、雨。
約束の時間になっても、奴は一向に来ない。少し散歩に言ってくる、といったのが最後、それがもう2時間も前の事だった。
屋敷内の誰もあいつの姿を見ていないという事は、おそらくあいつは散歩に出かけたまま外にいるのだろう。
幸い行き先は分かっている。丁度煙草も切らしたし、買い物がてら探しに行こうと外に出た瞬間、顔に大量の雨が降り注いだ。
成る程、と納得して、袖で顔を拭い、傘を掴む。
渋い、濃い緑色の大きな傘。
公園に向かえば、そこに人影。
それがあいつだと気付くまでにはそう時間はかからなかった。
あいつはぼうっと天を睨み、雨を凌ぐ大樹の下から出ようとする。
傘を差してやると、こいつは驚いたような顔をした。
「・・・遅ェぞ」
ぼそっと呟けば、こいつはふわりと笑った。
「ごめんなさい」
笑いながら、傘に入ってくる。
ああ、最悪な雨の日も。
こういう時は、悪かねえな。
雨の降る日に、濃緑の傘の下でPR