うわあタイトル意味不明ですね・・・内容も意味不明ですね・・・
その丘は山の中腹ぐらいにあった。
眼下に広がる大きな森の向こうには、ぼやけた青い海がやわらかに空と混ざり合う場所が見えて、とても綺麗だった。
あたしは、その綺麗な綺麗な丘のなだらかな傾斜の部分に立って、前に立つ白い真四角の石と、その正面で立ったままうなだれている男の人を見た。
男の人はあたしの知り合いで(名前は伏せておく)、今回あたしをこの場に誘った人だった。
でも、あたしはこの人に何もしてやれない。
石を見れば、綺麗な字で名前(伏せておく)が書かれていた。このお墓は、持ち主の親類がここがいいと言い張って特別に、内密に作った場所だ。実際人里離れたこの場所は美しいが誰も来ない。それでいいのかと親類の人に聞いたら、「来る奴がいらァ」と相手にしてくれなかった。そして今、あたしは彼の言葉に納得している。
あたしの真正面に立っている男の人の手が見える。筋張って大きな手だ。横顔が少しだけ見える。すっと通った鼻筋で、一瞬危ないくらい、死んじゃいそうなくらい胸がずきんと痛んだ。
ばかだなあ。なんで好きだって言わなかったんですか。こうなっているのが分かっていたのに。あなたはばかだ。おおばかものだ。
なんであたしをこんなところに連れてきてしまったんですか。
なんでこんな綺麗なところにお墓があるんですか。
死んじゃった人はすごくすごく綺麗に飾られて記憶に残るのに、なんでもっともっと綺麗なこんな場所に眠るんですか。
なんで、あなたは綺麗な人の前で俯いて、一緒に連れてきたあたしに見られないように、一生懸命声をこらえて泣いているんですか。
あたし、来なければ良かった。練乳の買い出しですとか言って逃げて来れば良かった。なんであたしはこの人と一緒にこの人の好きだった人の、綺麗な綺麗なお墓にお参りに来ているんだろう。不条理だ。綺麗な死人と俗世に塗れたあたしじゃあ違いすぎる。
「・・・帰るぞ」
あたしの目の前の男の人が振り向いて、整った顔がこちらを向いて、寒色の淡い色素の瞳がこっちを真っ直ぐ見据えた。それに我慢が出来なくて、ぽろりと目が涙を零した。
「あなたはどうして、あたしをここにつれてきたんですか」
彼はこの丘から見える空と海の交わる地点くらい優しく笑って
「今度はもう、大事なものを失わないようにだ」
あたしの手を叩いた。猫が猫じゃらしにじゃれ付くみたいに。あたしは哀しいんだか嬉しいんだか分からずただぼろぼろ泣いてばかりで、「泣き虫だな」と大好きな彼を困らせた。
PR