ダークネスシリーズ第2弾。
読みにくくてごめんなさい。
戦争中兵隊さんは子供たちの憧れの存在だったという話を元に一気に書き上げました。
戦場で死ぬ事は酷く下らない不名誉な事に思われる。
何時かの思い鉄の塊を肩に担ぎ、ふと、嘲笑を零した。
何時だったか、気持ち悪い(あれは確か野草色と言うのだ。父はそう言って、煙管をまた銜えた)色を見に纏った、酷く険しい顔をした男が家の前を通った事が在る。其の頃は全く子供で愚かだった私は、彼奴に敬礼をし、素晴らしいものだ、と溜息を漏らした。青年は私の前にしゃがみ込み、坊も何時かは之を手にする時が来る。大丈夫だ、この帝國は決して屈しはしない。其れまで覚えていろ、我等の契りを! と言い残し、再び歩き去った。青年の抱える武器は思い鉛色の鉄の塊で、矢張り父曰く銃と言うらしかった。私は其の武器に何故かとても心引かれた。何時か手にする時を、どれ程待ち望んだか。
しかし、今この手の中の思い銃器は、がちゃがちゃと忙しなく汚い低俗音を発しており、不快な事極まりない。私ははあっと大仰に息を吐いて見せた。全く下らない。低俗で、下品で、野蛮だ。この私が何故、あの血と死体しかない戦場に赴かなければ成らないのだろう。そして、何故其処で死なねばならぬのだろう。非常に、不快だ。
私は、今日も食膳に出された南瓜に溜息をつく。其れを見て、御前は顔を顰めた。贅沢は敵で御座いますよ、坊ちゃま。もう私はこの家の主と成りうる者だ、其の名で呼ぶな。でも然し坊ちゃまは、父様に見捨てられたこの御家の御次男で御座いますゆえ、家督は長男様がお継ぎに成るご予定では。ああ、下らない、下らない。私は父に見捨てられたのだよ。あの、兵隊の着る服の色は若草色で、兵隊が担ぐ、今私が持っている、この思い鉛色の鉄の塊の名を教えてくれた父はもう私は要らないのだとほざくのか! この世は何処までも低俗的だ。神など、何処にも居やしない。(そうでければ、私が、こんなに苦しむ筈など、)
御前は少し顔を歪めた。坊ちゃま、父様などお気に為さらないで下さいまし、坊ちゃまには私が居ります。全く、贅沢が敵だという者の何が信じられるか。ですが坊ちゃま、父様は、最近何も食べていらっしゃいません。浮いた食費を全て、貴方様の其の凛々しい御軍服にお当てに為さいました。其処まで財政が酷かったのか? 呆れた。だから私が。
坊ちゃま、私は戦争が嫌いで御座います。貴方様を戦場に送り出すのが何よりも嫌で御座います。貴方様に苦しい生活を強い、苦しい思いをさせる戦争を何よりも憎んでおります。戦場で死ぬ事が名誉だなんて、真実の欠片も其の中に見当たりません。ですから、如何かお願い致します、坊ちゃま、必ず、この地に帰ってくると。
呆れた願いだ。この帝國を敵に回す願いだ。しかし、未だ願いは届くのやも知れぬ。
私が外に出た瞬間、御前は機械的に敬礼をした。目元が濡れていた。私は敬礼を返し、そっと、慣れた草小屋を旅立った。空を見上げれば、褪せた青が私を見つめ返した。
ああ、この世界の狭い事よ。
しかし、この世の広い事よ!
贅沢は敵で御座いますよ
PR