今タイトル打ってうおぅ! と思ったんですけど
別に韓流の映画だかドラマだかのアレとは全く関係ありませんからね・・・!
(失う笑いと書いて失笑と読む)
冷たい風はくるくると小さな渦を巻きながらぼくたちの間をくぐり抜けた。はらはら、風にのせられて儚く舞う白い花びらは美しくて、それが花びらではないということを忘れさせてしまいそうだった。
わたしゆきをみるのははじめてよ、という彼女の弾んだ声を聞いて、残念だね、とぼくはぽろりと零した。振り向いた彼女の顔はけげんそうで、ぼくは、笑ってしまった。(本当はこれは失笑なのだけれど、そんなことはぼく以外知らない)
冷たい風がまた一陣吹いて、ぼくたちを囲めば、彼女は心底驚いたようにゆきってつめたいのねぇ。と言った。今度はあたたかい微笑みになれたかなと思うけれど、それは彼女が決めることだったから、ぼくは何も言えないし出来ない。
(そう言ったら君は笑った〔失笑じゃなく〕)
この凍てつく極寒の空に彼女の体は小さすぎて、その小さな体は今にもぬくもりと呼ばれるものを全て奪われてしまいそうだったけれど、彼女のあたたかくて優しすぎる命の火はほんの少しずつ、本当に少しずつこの冷え切った外気とぼくの心にこっそり巣食う氷を溶かしている。いのちって偉大だ。今の人間の世は科学技術が進歩して人間によく近づいたロボットがいっぱいいるけれど、ただの葉っぱ1枚の動きも再現できないんだよ。彼女はその科学じゃ証明できない命の不思議を全部持っている。神様はきっとこの命の光を見たくて下の世界にアダムとイヴを住まわしたんだろう。だとすれば、本当に
(だってほら、ぼくはまたなにかを失おうとしている)
残念だね、とぼくはまた言った。彼女はなにが? と首を傾けた。あたたかくてやわらかくてきれいな命だ。本当に彼女は純粋で無垢で、今自分がどんな状況なのかも分からないのだろう。そうだね、それが良いのかもしれない。彼女はどこまでも穢れを知らない、一種の神様なのだ。アダムとイヴをこの世に作り出した。だとしたら神様、ああ、どうしてここはこんなにも寒いのだろう。だっておかしいじゃないか、今は、
(君すら、失おうとしている〔また失笑が零れた〕)
「今が、真夏じゃなければ良かったのにね」
この極寒の寒空が、1年でいちばんあつい、真夏。
8月の雪
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