大事だったんです、あなたが、それはもうずっと!
莫迦みたいにお固くて、莫迦みたいに厳しくて、やっぱり莫迦だったあなたが。
ばーかばーか! って言いながらもあなたの事を目で追ってるあたしもやっぱり莫迦です。
何だ、元を正せばあたしの周りにいる奴はみんな莫迦でした。
いっつもバカやって、あなたに怒られている人もいました。
いっつもあなたの事をばかだばかだ! ってあたしと一緒に言ってる人だって、莫迦です。
だからまあ総じて言えばこの世界は莫迦で構成されている! と言ってもきっと過言じゃないんだと思います。本当の事なんてお莫迦のあたしには気にしていられません!
ばかだなぁ、と口が勝手に動きました。あなたはあたしを睨みます。何が、とあなたが聞いてきたので、あたしは全部ですよばーか! とあなたの頭を叩きました。いってえ! とあなたが頭を抱えるのを見て、あたしは笑ってしまいます。別に苛めるのが楽しいとかそういうのじゃなくて、きっとこれはあなたと一緒にいられて、あなたとこうして触れ合える、この時間がたまらなく幸せなものだからなのでしょう。ああ、そうやって考えると、本当にあたしはひねくれた気持ちひとつ無く純粋にあなたが好きなんですね。我ながら呆れてしまいますけど。
お莫迦ですよねえあなたもあたしも。やっぱこの世は莫迦だ! 莫迦だけでできているのだこの宇宙は! 周りを見渡せば見渡した数だけ莫迦が見えます。身勝手で、他人とどうしても相容れない、あなたみたいなひと。あなたに想い焦がれるあたしみたいなひと。このふたつで世界は出来上がってしまいました。神様ごめんなさい、あなたたちの期待には添えないお莫迦ばっかり生まれてしまいました。でもあたし後悔なんてしていませんよ。きっとあたしがもっと賢くて、この世界に溢れる人たちもみんなこれほど莫迦じゃなかったら、あたしはあなたに会えなかったし、もし会っていたとしても「ああそこに人がいるなあ」程度にしか認識できなかったでしょう。でもあたしもあなたも大ばか者だったお蔭で今あたしはあなたの隣でにこにこ笑えるのです。うわぁそれすっげえ幸せで贅沢なことだ! どうしてみんなそれに気付かないんでしょうか? みんなは与えられている幸せには鈍感になってしまうのです。だからそれに気付ける事って、とっても価値がある事だとあたしは思います。
ねえ、そう思いませんか? あたしは隣のあなたにそう声をかけました。何がだ莫迦、と言われたのであなたもれっきとした由緒正しき莫迦ですよとあたしは笑いました。やっぱりしあわせだ。ねえ、やっぱりみんなはこの幸せに仰け反って喜ぶべきだと思うんですよね。いつか失って気がつくくらいなら、今の内にその幸せを意識して噛み締めたいから。
とりあえず今言える事は、今あたしの隣に腰掛けている格好いいのに莫迦なあなたの事が大好きで大好きで、そんなあたしもやっぱりお莫迦だという事だけなのです。
本当に好きですよ、お莫迦なひと。だからもう少しこの幸せを隣で感じさせてくださいね。
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